雑記帳

私、渋谷次郎が調べたことや考えたことを書き留めておくためのブログです。

政令市では未就学児人口の3割に保育所が標準に/さいたま市の保育環境/政令都市間比較

さいたま市の保育園はどれくらい足りないのか? その手掛かりとして全国に21ある政令都市のなかで比較してみた。その結果、さいたま市は見事にワースト1。未就学児人口の20%だが、これは政令市の平均よりも10%ほど少ない。そして、政令市として平均的な割合にするには、現有する定員数の5割増しが必要という状況である。この10年で見ると、横浜市川崎市に追い抜かれ、千葉市との距離は縮まらない。近年の努力を続ければ浜松市を抜くことはできるだろうが、ランキング下位に属するそれ以外の政令市はいずれも急ピッチで保育園定員を増やしており、この不名誉からの脱出は容易ではない。

図表1:保育所定員数/未就学児人口
(出生数/H24.12、定員/H25.4、 定員数を出生数の6倍で除して比較)

出所:「大都市比較統計年表」大都市統計協議会から筆者が作成


0、はじめに
さいたま市議会の決算・行政評価特別委員会が平成26年3月にまとめた「行政評価報告書 volⅢ」は、保育所の整備状況をいくつかの指標を使って東京を除く他の政令指定都市20市と比較している。いずれの指標でも他の市に比べ見劣りしていることから、財政的な面を重視すべきこの報告書ではあるが、「潜在的な保育需要も含めた待機児童解消は喫緊(きっきん)の課題である」という率直なコメントが添えらることになった。*1

しかし、入手できた報告書では、用いられている数値の出所やその吟味が省かれている。このため、政令都市間の各種統計を比較した「大都市比較統計年表」あたりの数値がベースになっていると考え、私自身でもそちらの数値を使った考察をしてみることにした。*2 
本稿では、その手はじめとして、保育所定員数と人口を比較してみたい。


*1 「行政評価報告書 volⅢ」さいたま市議会 決算・行政評価特別委員会(H26年3月)、P15.
*2 「大都市比較統計年表」大都市統計協議会 は横浜市がオンラインで提供している。


1、さいたま市がワーストワン:保育所定員数の人口比
政令指定都市における人口あたりの保育所定員数を比べたのが左の表である。前述の報告書では、10万人あたりの数で比較しているが、もちろん結果は同じこと。さいたま市がワースト1である。
横並びが全て正しいわけではないとはいえ、これはやはり気になる。さいたま市になにか特別の理由があるかと考えて見ても筆者には思いつかない。市役所周辺では「さいたま市は幼稚園が子育てを担ってきた歴史がある」というフレーズを良く耳にする。しかし、首都圏の政令市なら、それほど変わらないと思う。

図表2 各政令市の保育所定員/人口
(人口/H24.12、定員/H25.4)

出所:「大都市比較統計年表」大都市統計協議会より


2、 子どもの数と比べてもおなじ結果
この報告書では人口10万人あたりの整備率が比較されているが、これは高齢者を含めた人口全体を母数として考えている。考えてみれば、全人口よりもむしろ未就学児の人口と比べる方がじっさいの不足感により近くなるはずである。残念ながらこの統計集では未就学児の人口は比較されていない。そこで出生後の死亡数や転居数等を考えるとやや不正確なのだが、出生数を6倍した数を0〜5歳児の人口とみなし、もういちど比較してみよう。その結果が冒頭の図表1である。


3、整備率30%があたりまえの時代に
政令市の保育所整備率の単純平均は30.3%である。新潟市の整備率の高さが眼をひくもののそれはそれとして、「政令市の整備率は概ね30%に至ろうとしている」ということができるだろう。それでも各市が待機児童に悩んでいるところが現状なのだから、さいたま市はまず早期にせめて30%台を達成することくらいは目標に掲げて欲しいものだ。


4、横浜・川崎に抜かれ、千葉に及ばず/ この10年間の変化
ところで、いったい何時からさいたま市はワースト1になってしまったのだろうか?
最後に、下位10都市のこの10年間の変化を調べたてみたのが、図表3である。
まださいたま市が合併したばかりの平成16年4月の時点では横浜市がワーストだったと思われるが、その後、良く知られているように横浜市は思い切った保育所増強策を実行している。さいたま市の増設もかなりのものだったのだが、横浜市川崎市にこの10年で追い抜かれ、千葉市にはなかなか追いつけないという状況だ。
とはいえ、朗報がないわけではない。まもなく浜松市だけは追い抜くことができそうだ。

図表3:保育所整備率(保育所定員数/未就学児人口)の推移
(出生数/当該年12月、定員/前年.4月、 定員数を出生数の6倍で除して比較)

出所:「大都市比較統計年表」大都市統計協議会より
※東京都のH21年定員のみは、H20年4月の数値で代用。(瑕疵が疑われるため)



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