雑記帳

私、渋谷次郎が調べたことや考えたことを書き留めておくためのブログです。

さいたま市の保育園整備率は政令指定都市間で最低水準?

さいたま市では未就学児童の人口比の保育施設定員が約30.6%とH25年に比べて約10%増となったが、相変わらず政令都市間では下位にとどまっている。

政令指定都市の保育施設整備率(平成29年4月現在)

 

もう3年前のことになるが、平成26年さいたま市議会の決算・行政評価特別委員会で、各政令都市間で比較しても、さいたま市の保育園の整備率の低いことが話題になったことがある。このときも未就学児人口あたりの保育園定員数でさいたま市は20%ギリギリしかなく最下位だったがその後はどうなったのだろう。

あの時と同様に平成29年4月現在の数字を並べてみたのが上のグラフ。制度がどんどん変わり、当時は認可保育園と認証型の保育園の数字を見ていたのたが、今回は小規模や認定子ども園の数字が入っているのできっちりとした比較にはならない。それでも、さいたま市内の未就学児人口に対する保育園の整備率は約10%近く、30%に引き上げられた。しかし、この間他の政令市でも整備が進められたのだろう。ランキング上はいまだ下位にとどまっているように見える。最下位!

それでも頑張って保育園を増やしてきたことを見てきた私としても、さすがに最下位は残念なところ。じつのところ堺市、神戸市、静岡市浜松市のように認定こども園の比率が高くなっている市の数字を、いったいどう評価すべきか迷うところでもある。公開されている集計表には,「各市(都)内各保育所から提出された保育所月報等の報告をもとに,保育を必要とする子ども(2・3号認定区分)を対象に集計したものである」と記されているので、集計しようとした方の意図はそのはずではなかろうが、各市の施設数と定員数を比べてみると、1園あたりの定員数が100名ほどとなっている市が多く、大阪市などは200人名を超えている。1号認定分の定員を除いた数字がきちんと報告されているのだろうか疑問に思える。各市における実情や誠実さが分っていないので、いまのところ判断は留保つきとしておきたい。

数字の出所;横浜市統計ポータルサイト 大都市比較統計年表 I ~ V

前回(平成25年4月)のグラフ https://www.facebook.com/…/a.53872041282…/1092601434102693/…

お昼寝中の放置にも焦点を!--保育園の死亡事故

「保育園落ちたのは私だ!」のブログで保育園不足をめぐる議論が盛り上がる今年4月中旬、大阪と東京の認可外保育園でお昼寝中の死亡事故のニュースが伝えられました。このようなニュースにでくわすと、私はまず「いったい何時間放置したんだろう?」とチェックすることにしています。
たいていのニュースがまずフォーカスするのは「うつぶせ寝」ですよね。でも、どれだけ放置したのかに着目した方が「何があったか」により接近できると思っています。

大阪市「たんぽぽの国」の記事を例にして読む

大阪市保育園「たんぽぽの国」の事故を伝える毎日新聞の記事の冒頭部分を見ながらいったいどれぐらいの時間放置されていたのかを想像してみましょう。事故の第一報となる記事です。

認可外保育園 昼寝の1歳児死亡…大阪
毎日新聞2016年4月12日


 大阪市淀川区東三国5の認可外保育園「たんぽぽの国」で今月4日、1歳の男児が心肺停止の状態になり、その後死亡していたことがわかった。市が12日、発表した。昼寝中にうつぶせになり窒息したとみられ、大阪府警淀川署は保育園の関係者から事情を聴くなどして、当時の詳しい状況を調べている。
 市によると、男児は4日午後2時40分ごろから保育室の布団で昼寝を始めた。午後3時半ごろ、うつぶせで呼吸をしていないことに保育士が気付き、119番通報。電話で指示を受けながら心臓マッサージをしたが回復せず、搬送先の病院で死亡が確認された。
市や運営会社によると、当時、保育室には男児を含む1〜3歳の11人がおり、保育士と職員の計2人が勤務。男児だけが昼寝をし、他の園児は同じ部屋でおやつを食べていたという。(以下略)

■チェック1:異常発見前の様子を誰が何時に確認しているか?

この新聞記事をもとに放置時間を考えてみることにしましょう。
まずは異常がなかったのはいつまでと確認されているかを見てみましょう。記事には「午後2時40分ごろから保育室の布団で昼寝を始めた」とあるからこの辺なんでしょうか。

ただ、良く読むとこの一文はなんだかとってもぼやけた表現ですよね。子どもが眼をつぶっていたのかどうかもわかりません。誰が、この子のどんな様子を見たのかぜんぜん読み取れません。

以下想像してみればですが、
スタッフは2人とも近寄ったり顔をのぞき込んだりはしてなさそう。ということは遠眼から見ただけなのかな。遠眼から見ているのにどうして「異常がない」と思ったんだろう。泣いてた? 布団がモゾモゾしてたかな…。

スタッフの誰かが、死亡する前、最後にこの子の顔をはっきりと見たのは「2時40分ごろ」より前のことになりそうですよね。わざわざ曖昧な報告を出すくらいですから、それは遡ること5分や10分のことではない。30分、あるいは1時間、ひょっとしたらみんなでお昼寝になる昼食後のみだっておかしくありません。

■チェック2:異常は誰がいつ発見したのか

以上のように、放置が始まるタイミングを想像してみたわけですが、次にいつまで放置されていたかを読み取って見たいと思います。

「午後3時半ごろ、うつぶせで呼吸をしていないことに保育士が気付き、119番通報。」
これもまた、新聞記事らしからぬ曖昧さを残した記述になっています。3時半というのは、異常に気付いた時刻なのか、それとも119番通報の記録上の時間なのか、はっきりしません。
通報の時刻は、すぐに調査で裏がとれるものだから冷静な人は嘘は付かないでしょう。ただそれにしてはあまりにザックリと3時半ですので、通報記録の時刻じゃあなさそうに見えます。やっぱり気付いた時刻が「3時半」ごろだったんでしょうか。じゃあ、通報は何時何分だったんだろう。

通常、両者はほぼ同時になるハズですが、保育園の死亡事故の歴史上、ある程度時間がかかってしまうことも少なくありません。そして、そのズレはなるべく短くして報告したいというのが当事者の気持ちにはあるでしょう。

それに心臓マッサージも気になります。「電話で指示を受けながら心臓マッサージをしたが回復せず」とありますが、逆に言えば、「通報し指示を受ける前に心臓マッサージはしていなかった」と読むことができるでしょう。とすると、なぜ心臓マッサージをすぐに始めなかったのか。気が動転しすぎてしまったのか、あるいはすでに子どもの状態がそういう気持ちにさせない状態だったのか。

■最低でも50分、最長なら2時間半
今回取り上げた毎日新聞の記事にはありませんが、産経など他紙の中には、2時40分と3時半から単純に計算して「最低でも50分放置」と表現しているものがあります。記者のなかにも放置時間を重く観て下さる方がおられるようです。
他方、ありうる最長の放置時間は、通常のお昼寝時間の始まりから3時半ごろまでだでしょう。じつに2時間半以上であったとしてもおかしくない。そういう報告しか現段階では上がっていないということになるのでしょう。

■おわりに
私が保育に関心をもつようになってから10年以上経ちますが、保育園のお昼寝中に死亡したニュースに何度も出会いました。毎回じっくり見てきました。しかし、15分前には普通の顔をしていた子どもの呼吸が突然止まってしまい、手を尽くしたけれどもダメだったというケースは一度も聞いたことがありません。少なくとも1時間以上の放置が予想できるものばかりです。

保育園に通う児童数全体から見れば死亡数は小さな数字だという議論もあります。しかし、これまであった死亡事故の多くはやはり防げるものだったのではないかという気がするのです。そうした議論の仕方は現状に合わないと思います。致しかたないと捉えるもっと踏み込んで言えば、お昼寝中に長時間顔色や息をチェックしない放置は、それだけで死亡事故において過失として認定すべき要素ではないのかとさえ思うようになりました。

  • いったい何時間放置したのだろう?
  • なぜそんなに長時間放置してしまったのだろう?

 ぜひ、みなさんにはそう考えながらニュースを読んでいただきたいと思います。そして報道の方には「放置時間」にもっと着目した取材や報道を心がけていただきたいと思います。 行政の方には、曖昧な報告は退けて放置時間をしっかりと捕捉し統計化していただきたいのです。

保育園の不足はどこまで? 1歳児の不承諾数の6倍から考えよう!

■保育園不足の議論をランクアップしよう!

ブログ記事「保育園落ちたの私だ」をきっかけに、今年の春はよりいっそう保育園の待機児童の議論が盛り上がりを見せている。政府もなにがしかの施策を打たざるを得ないところまできた。

ただし政府が示した「緊急対策」は規制緩和により若干の手当てができるのではないかというものだけでほとんど予算的な措置もなきに等しく本気度は低い。
やはり議論のステージをワンランクもツーランクもアップする必要があるだろう。そこで提言をいくつかしておきたいと思うようになった。
今回はまずその第一弾である。

■1歳児の不承諾数の6倍を顕在化した不足量としよう!

保育園不足の議論をランクアップするためには、各地でどれくらいの保育園が必要なのかをしっかりイメージすることが大切だ。

不承諾数からすでに顕在化している不足量として簡単に推定値をはじくことができる。ただし不承諾の数を不足量だと考えると、入園した子どもが何年くらい保育園で過ごすのかという点をまったく加味していないことに気づく。そこでよりましな手段として利用したいのは、

「1歳児の不承諾×6」

で得られる数字である。この式の後ろにある考え方は、1歳児で入園したら大半は5年間過ごすこと、さらに、2歳児、3歳児で各園で少しづつ定員増があることということであるので1を加えておいたくらいの意味である(注1)。とはいえ、これがすでに顕在化している不足量あることは間違いなく、早急に補うことが必要な保育園の定員数の下限となるだろう。

さいたま市だと5400名分が「顕在的」に不足

まずは私の地元、さいたま市を例に計算してみよう。
平成28年2月、1歳児の不承諾数は900件である。申請は2292件であったので、およそ40%の申請者は落ちたという悲しい結果だった。

さっそく不足量を上の式によって計算してみよう。

900×6=5400名

もし、定員100名の保育園を立てるにしても54園分にあたる。さいたま市の場合は、それくらいの規模で考えなければ前に進まないのだ。

今後公表される4月時点の待機児童数だが、さいたま市おそらく100名ほどの数字を示すだろう。もはやだれも信じていない数字だが、全年齢合計の不承諾数(2084件)と比べても倍以上の数となる。

小手先の緊急対策になぜ呆れてしまうのかそろそろおわかりいただけだろうか。ぜひ「1歳児の不承諾数×6」で顕在化している最低限の不足数を捉えることで、規模を意識したまともな待機児童解消策が議論されなければならないと思う。

もちろん、保育園に入れそうもないから申請もしていない方の数や、保育園に入れるなら働きたいというような、いわゆる潜在的なニーズはここには含まれていない。真のニーズを考えるなら本当はこの数字の上に加えなければならないのだが、神学論争のように終わりそうもないので、こんないい加減な数字でもそれを毎年チェックし続ける方がよほど建設的な議論となるだろう。

■不承諾数に注目ももう一工夫を

自治体が発表し厚労省が集計している「待機児童数」が役立たないということで、次に注目されるようになったのが認可園の利用申請に対する不承諾通知の数だった。その不承諾の数で各区や市町村を比べると、このエリアが厳しそうだなという比較には役立つ。杉並区とさいたま市はどっちがより厳しいのかとか考える上では役立つ。でもそれだけにしか役立たない。各エリアであとどれぐらいの保育園を作ったらいいのかという数字として使うには、かなり少なすぎるのである。ひどいひどいと騒ぐにはいいけど具体的な計画の立案には、不承諾数の合計では残念ながらまだまだ役不足な数字なのだ。

今年は各政令市や都内特別区の数値を取り上げるメディアも多くなった。不承諾数は公表していない自治体も少なくないが、どんな市や都道府県にとっても、集計は難しくないし、おそらくすでに集計しているのではないかと思われる。ぜひメディアも住民もとにかく公表を求めた方がいい。そして首都圏全体や全国都市部のニーズも、そこから積算して算出し考える必要がある。

さて、次回は、保育園の重大事故に関してだけど、「うつぶせ寝」よりも置去り放置された時間の長さをお昼寝中の死亡事故では確認して欲しいということを書きたいと思う。